若いカワセミの恋と育雛の顛末記-2019年春:後編

野鳥の生態

繁殖記録の前編では、縄張りとする池に定住したところから、巣穴作りに勤しむペアにメスが乱入したことで発生した激しいバトルまでを紹介しました。

この後編では、産卵→抱卵→ヒナへの給餌→巣立ちにいたる過程で観察によって確認できたこと、必要に迫られて専門書などで調べてこと、および観察の際に撮影できたシーンも紹介します。

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繁殖活動の時間的な流れと各段階に要する日数

ここで繁殖活動の流れを時系列でまとめておきます。

学術的なレベルで日数などの数字が分かっている活動はその数字も記しておきます。

  1. オスがパートナーをさがす
  2. オスの繁殖地にメスが出現する
  3. 雌雄で巣穴作りを始める
  4. 巣穴作りと並行して求愛給餌と交尾が行われる
  5. 産卵する(1日に1個ずつ)
  6. 産卵完了と同時に雌雄交代での抱卵が始まる(夜間はメスが巣内に留まる)
  7. 抱卵開始から18日(~19日)で孵化する(17日で孵化した例もある)
  8. 孵化と同時にヒナの保温のために雌雄交代で抱雛が始まる(約1週間~10日間程度)
  9. 孵化と同時にヒナへの給餌が始まる
  10. 巣立ちが近くなるとヒナのダイエットが始まる(下記で詳細を記す)
  11. 孵化後23~25日でヒナが巣立ちを迎える
  12. 巣立った幼鳥はしばらくの間給餌を受けながら生きる術を習得する
  13. 親離れをする(幼鳥がそれぞれ分散していく)

繁殖活動の各段階の詳細

図鑑や学術的な資料および2019年の観察結果を元に、主な段階(前編で解説済みを除く)を解説します。(推測の域を出ない情報もありますので、それに関しては参考程度にしてください)

メスの出現から巣穴作り開始までは約1週間(?)

オスのアプローチを受け入れるとメスはオスの繁殖地を訪れます。

3月11日に2羽のカワセミが仲良さそうに一緒にいるのを目撃した人がいます。

残念ながら、雌雄の区別はできていませんが、オス同士ならバトルが起きているはずですから、たぶんカップルだったのだろうと推測できます。

雌雄での巣作りを確認できたのが、3月16日の午前中です。(3月に入ってからほぼ毎日観察していました)

私は普段は午前中に観察しますので、前日の午後から巣作りを開始した可能性は否定できません。

したがって、メスの出現から約1週間で巣穴作りが始まったと2019年に関しては言えるでしょう。(この「1週間」という期間が普遍的なものかどうかは数年にわたって観察を続けないと分かりません)

産卵開始は4月18日、抱卵開始は19日

後述しますが、巣立ちの予定日はほぼ特定できました。

その日(5月31日)から、孵化するまでの「約18日間」と孵化から巣立ちまでの「23~25日間」を加えて逆算すると、4月18日前後に産卵したのだろうと推測できます。

産卵は1日に1個ずつです。

一般的には、3~4個、多いときは7個も産むそうです。

私のフィールドでは、ヒナへの給餌の様子から少なくともヒナとしての数は2羽ではないかと判断しました。(つまり、うまく孵化しなかった卵もあるかもしれないということです)

2017年も巣立ちをしたのは2羽でしたから、この池では珍しいことではないのかもしれません。

そうだとすると、最終卵を産み終えたのが4月19日と考えられます。

それと同時に抱卵が始まるわけですから、必然的に19日が抱卵開始日ということになります。

孵化は5月6日

孵化するのに約18日かかります。

抱卵開始日から18日後は5月6日です。

この5月6日に珍しいシーンを撮影した観察者がおられます。そのシーンとは「殻出し」です。

「殻出し」って何?

孵化した後、必要なくなった殻が産室にあると邪魔になるので巣の外に出します。また、うまく孵化しなかった場合も同様です。この際、親は嘴に加えて遠くまで殻を運んでいきます。それは巣の近くに放置するとヘビやカラスに巣の存在を知られるからだと考えられています。この行動を「殻出し」と呼んでいます。

というわけで、孵化の予定日に「殻出し」が偶然に確認されたことは、産卵日や巣立ちの日までも概ね予想がつくことになります。

特に、巣立ちの予定日に関しては後述するもう一つの特徴的な行動と合わせると、1日ぐらいは前後するかもしれませんが、ほぼピンポイントで特定できるでしょう。

狙って撮影できるシーンではありませんが、よくぞこの「殻出し」を撮影してくれたものだと感謝、感謝です。

最初、その話を聞いたときは、速攻で否定してしまいました。ヒナの糞を運び出していたのだと思いますよ、と。

無知というのは怖いもので、他の野鳥の生態的特徴を当てはめて判断してしまいました。

よくよく調べてみると、カワセミの糞は水様性ですからあり得ない判断でした。

ついでながら、ヒナは産室からトンネルの入り口の方に向かってフンを放出します。

トンネルは緩やかに傾斜しているので放出された糞は外に流れ出る仕組みになっているようです。

赤面の至りでした。m(._.)m

5月6日 孵化と同時に抱雛が始まる

孵化すると同時に始まることが2つあります。

1つは、抱雛(ほうすう)です。

孵化したばかりのヒナは丸裸状態なので保温のために親が交代で抱雛します。

この期間を「抱雛期間」といいます。

期間は、気温などの環境によるのですが、概ね1週間ほどから10日ほど続くようです。

5月6日 ヒナへの給餌が始まる

孵化と同時にもう1つ始まるのは、ヒナへの給餌です。

給餌が始まると明らかに親の行動が活発になることが観察してよく分かりました。(来季はこの経験をより具体的な観察に生かせると思います。)

ある学術調査した資料によると、抱雛期が終わると給餌回数は倍近くに増えることが分かっています。

また、給餌の時間帯は朝と夕方に多いことも分かっています。

後者の理由は容易に推測できそうですね。

つまり、朝は長い夜を過ごしたヒナたちは空腹なはずだし、夕方はこれから長い夜を何も食べずに過ごさなければならないので、たくさんの餌を与えようとするのでしょう。

成長とともに餌の大きさも変わります。

当然と言えば当然ですが、ヒナの成長につれて運んでくる餌が大きくなります。(それを観察することで、順調にヒナが育っているのだなと安心できます)

親の嘴の長さは約36mmあります。

これを基準に餌の大きさを測った学術データを見ると、孵化して3日ほどは極小(10mm以下)から小の大きさ(嘴の半分以下)のが多く、4日目くらいから嘴の半分~嘴サイズの大きさ(=中)が増え、10日を過ぎる頃になると大半が大サイズ(嘴サイズ以上)になるようです。

実際、巣立ち近くになると、こんな大きな魚をヒナは飲み込めるのだろうかと心配になるようなサイズ(特大サイズ)のものを給餌するのを何度も観察しました。

5月10日撮影:推測が正しければ孵化5日目
5月11日撮影:推測が正しければ孵化日目
5月12日撮影:推測が正しければ孵化7日目
5月13日撮影:推測が正しければ孵化8日目
5月13日撮影:推測が正しければ孵化8日目
※大サイズ(の中では小さい方)が初めて確認できました

給餌期間中は撮影チャンス!(^^)

データによるとヒナは数日で食べ盛りになるので、親はひっきりなしに餌を運んできます。

今回の繁殖では、推測ではヒナの数は2羽だと考えているのですが、それでもかなりな頻度で餌を運んできます。ヒナの数が多ければその分給餌の回数も増えます。ということはそれだけ目撃する機会が多いということです。

また、給餌はよく観察していると行動がワンパターンになることが多いので、次に起こることをかなりな確率で予測することができます。

これら2点のことから、ヒナに対する給餌期間中は撮影しやすいと言えるでしょう。

ダイエットが始まる

観察しながら浮かんできた疑問を解決したくて図鑑や学術資料を読んでいる時に、巣立ち近くなると極端なダイエットをさせるという事実を知りました。

3日間のダイエットをして4日目に巣立ち

というパターンのようです。(ヒナが多数いるような場合は1羽がフライングするようなこともあるようですが)

したがって、極端に給餌回数が減ったなと分かったら巣立ちの日がほぼ確定できるということになります。

私のフィールドでは、極端なダイエットが始まる2~3日前から給餌回数が減ったのが分かりました。

「極端なダイエット」がどういうものなのかその実態を知らなかったので、最初は、例の「ダイエット」が始まったのだなと思いました。

ところが、そのほんの数日後に4~5時間観察して2回しか給餌しない、というような様子になりました。

この時点でようやく、「極端なダイエット」がどういうものなのか分かりました。(ヒナの数の推測が正しければ、2羽だったので余計に”極端”に見えたのかもしれません。

巣立ちは5月31日と予測

孵化した日から計算すると巣立ち予定日は「5月28日~30日」になりますが、孵化期間が少しアバウトな要素があるし、そもそもすべてのヒナが同じ日に孵化したかどうかも分からないという不確実要素もあります。

28日から極端なダイエットが始まり30日まで、午前中の観察時間内に2~3回だけ特大の魚を咥えて巣穴に入ったのを確認しています。

このことから4日目の「5月31日」が『巣立ちの日』だと判断しました。そして、この判断には自信を持っています。

巣立たず (;_;)

ただただ驚きと落胆でした。

念のために予定日を過ぎても数日間観察しましたが、親もそのうちに来なくなってしまいました。

巣立たなかった理由はいくつか考えられます。

  • ヘビなどの外敵にやられた(近くには毎年アオダイショウが現れます)
  • 巣の中で感染症などの病気にかかった
  • だれか人が持ち去った

最後の可能性は低いとは思いますが、たまたま観察している時に林の中に入り込み巣穴付近に近づいた女性がいました。足を滑らせてそれ以上近づくのを諦めた様子でしたが、そもそも何のために池に落ちる危険を犯して巣穴に近づく必要があったのか疑問は残ります。

あとがき

多くの時間とエネルギーを使って観察を行っていたので、この結果にはショックが大きすぎてしばらく「茫然自失」という状態が続き、そもそもこの観察記録のアップにとりかかるのに手間取りました。

さらにはこの後編をアップするのはこんなにも遅れてしまいました。

ここまでくると怠慢でしかありません。m(._.)m

本日(2019年12月16日)、公園で声をかけてくださった方々のおかげで眠ったままになっていた後編の下書きに手を入れてここに公開することができました。

ありがとうございました。

コメント

  1. […] 若いカワセミの恋と育雛の顛末記-2019年春:後編2019年春カワセミの繁殖期の生活記録-後編:繁殖期をむかえたオスのカワセミの縄張り争いや求愛活動、さらには恋のバトルを経て無事 […]

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