若いカワセミの恋と育雛の顛末記-2019年春:前編

野鳥の生態

探鳥ウォーキングのフィールドにしている公園には比較的広めの池があり、いつの頃からかカワセミが毎年のように見られることで知られています。

池の周囲だけをウォーキングする人たちの中にも、他の野鳥には特に興味を持たなくてもカワセミがいるとしばし足を止めて観察する人がいるほど人気の小鳥さんです。

滝の宮公園-大池

この公園で野鳥の観察と撮影をするようになって4年目(2019年現在)ですが今季初めて、独身生活を謳歌する雄のカワセミが恋の季節をむかえ繁殖活動をする過程をかなり濃密に観察することができました。

最後には予想だにしない結果が待ち受けていましたが、今季ほど詳しく観察できる機会は2度とないかもしれないので、目視やレンズを通して見た一部始終をカワセミの繁殖記録としてまとめてみようと思います。

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2018年のカワセミの様子

まずは2018年の状況から説明しておきます。

2017年5月中旬:2羽の幼鳥が確認できました

上の写真のように、毎年この大池で繁殖していたと思われるカワセミ(♂)は2018年3月末に姿を消しまったく見られなくなりました。どこか別の場所に巣を作ったようです。

そして、6月末になって幼鳥が2羽(♂と♀)たまにこの池にやって来るようになり、9月中旬から雄が定住し始めたようでした。(6月に観察したのと同じ個体かどうかは正確には判断できません)

このカワセミ君はとてもフレンドリー(と勝手に解釈しているのですが)で、12月になると時折驚くほど近くで撮影させてくれるようになりました。

ノートリミング
ウォーキングする人がひっきりなしに通る時間帯でもここまで近寄ることができました。

このカワセミ君の下の嘴の先が何らかの理由で既にこの時点で少し欠損しています。この特徴のおかげで、2018年から2019年にかけて同じ個体を観察していることに確信を持つことができました。

2019年冬-1月29日:縄張り争い勃発

探鳥ウォーキングの最後はいつも池の周りを歩いて終わります。

この日も尾根から下りてきて池沿いの遊歩道を歩き始めるとすぐに2羽のカワセミがいることに気が付きました。

左が縄張り先住者のカワセミ君、右が侵入者のオス
縄張り争いでは、近くに止まり普段は聞くことのない強い鳴き声を発して威嚇し合います

遠くからは仲良く並んでいるようにも見え、特に根拠もなく

カップルになったんだ!

と思いました。

ところが、しばらくすると激しく鳴いて威嚇し合いながら片方がもう片方の方へ短い脚でひょこひょことにじり寄ります。(見ている分には、ユーモラスな光景です)

一瞬のことなのでハッキリとは分かりませんが、片方が相手に(あるいは、同時に)飛びかかり、結果的にホバリングをし合うような様子が何回か見られました。

その際も、カワセミのものとは思えない鳴き声を発していました。それが喧嘩の時に出す声だと後から分かりました。

威嚇する際は、身体をすぼめて細くすることも今回初めて知りました。(上の写真参照)

縄張りへの侵入者と闘うカワセミの姿を見たのは初めてだったので理解するまで時間がかかりましたが貴重な観察経験になりました。

結局、他の観察者の情報も合わせると、このバトルは少なくとも3日ほど続いたようです。(私自身は連続2日目撃しました)

勝者は先住者のカワセミ君でした。(嘴の先の欠損という特徴がなければ識別は不可能でした)

バトルの瞬間を撮影できなかったのは実に残念…

このバトルの後も、2月17日にオスが侵入してきているのを確認しました。

2月17日撮影:嘴の先に欠損が見られないので侵入者と断定できました

この時は、先のバトルで決着が実質的な決着が付いていたためか、大きなバトルにはなりませんでした。 侵入者を池の外まで追いかけていき、しばらくして戻ってきました。

おそらく上記以外の時にも侵入者がやって来たのだろうと推測できますが、オスを2羽同時に目撃しないかぎりハッキリしたことは分かりません。

繁殖期の特徴

後述しますが、巣穴づくりは3月の16日に初めて確認できました。(16日から始まったかどうかは断定できません)

それまでの間に、この池では観察できない繁殖期特有の活動があります。

カワセミは「縄張り意識」が強く、繁殖期以外はオスとメスがそれぞれ単独で自分の縄張りを持ち生活しています。

ところが、繁殖期(概ね始まりは2月下旬~3月初旬?)に入ると

オスがメスの縄張りに出かけていきます。

この時点では、メスからするとオスはただの侵入者なので、メスはオスを当然のように攻撃します。

オスはメスに受け入れられるまで様々なアピール(求愛行動)をするようです。

最終的にメスがオスの求愛を受け入れると、「求愛飛行」が見られるようになります。

求愛飛行とは?

繁殖期において雌雄のカワセミが水面近くをもつれ合うように追いかけ合って飛翔する行動のことで、この際に激しく鳴き合う声が聞かれます。

そうこうするうちに、オスの縄張りにメスが姿を見せるようになります。

ここから営巣の準備が始まります。

2019年3月16日-巣穴作りを確認

3月11日に、2羽のカワセミを同時に見た人がいました。

雌雄は不明なので断言はできませんが、おそらくメスがオスの縄張りに招待されたのがこの日あたりではないでしょうか。

その推測の根拠は、下記の写真(16日撮影)にあります。

左上がオス、右下がメス
メスの嘴に赤土が付いているのが確認できました

確認しやすいように次の日、17日に撮影した写真をご覧ください。

下嘴が赤いのでメス。嘴の先に赤土が付いています

メスがオスの縄張りに顔を出してすぐにメスも加わっての巣穴づくりは考えにくいのです。ここまでの間にある程度の時間が経過していると考えられます。

したがって、11日に目撃されたのが雌雄だとすると、オスの縄張りに招待されていたのでしょう。

一般的には、
まず最初に、オスは巣穴をいくつか試し堀りした後、メスを呼びに行きます。

そして、メスに巣穴をアピールするがごとく、オスは巣穴の出入りを一日中何度も繰り返します。

こうして、巣穴候補の中から最終的な巣穴が決まるようです。

本格的な巣穴づくりが始まるのはこの時点からで、雌雄交代で穴掘りに勤しむことになります。

ということは、メスの嘴に赤土が付いていたということは、遅くともこの日(16日)から本格的な巣作りが始まったということを意味しています。

カワセミの巣穴に関するプチ情報

資料によっても異なるのですが、巣穴の形状は概ね直径が6~9cm、奥行き(深さ)がなんと数十センチから1メートル近くあり、奥にいくにしたがって少し高くなっているそうです。そして、一番奥が少し広がっていて、「産室」と呼ばれる空間になっています。産卵し子育て(抱卵と育雛)をする場所ですね。

別の巣穴を掘り出した!

4月2日、あるポイントで繁殖の準備をしていたはずなのに、いつもとどこか違う行動をとっているように見えたので注意して観察していました。

すると、雌雄で穴掘りをしているではありませんか!しかも、当然別のポイントで!!

1回目の繁殖途中に2回目の繁殖のための巣穴を掘ることもあるとどこかに書かれていました。そういうことなのでしょうか。

しかし、この穴掘りは3日ほどで止めてしまいました。

いまなお、大きな謎です?!

しかし、収穫が1つありました。

不鮮明ですが距離があり曇り空だったのでこれが限界でした

この巣穴は本命の巣穴よりも観察しやすいところにあったので、この瞬間を何度か目撃することができました。

つまり、「穴から出てくる時は後ずさりしたまま入り口の所までやってきて、その後身体を反転させて飛ぶ」ということを観察によって知ることができました。

後日、巣穴の中のヒナに給餌する際も同様に後ずさりして出てくることを確認しました。

カワセミの求愛給餌と交尾

本格的な巣穴作りと並行して、「求愛給餌」と「交尾」が行われます。

一般に「求愛給餌」とは?

求愛行動の中で、オスがメスに餌を与えることを求愛給餌と呼んでいて、多くの種で確認されている生態です。求愛給餌は、
(1)番(つがい)を維持しその絆を強める
(2)産卵を控えたメスに対する栄養補給
(3)メスに対する優れた狩り能力のアピール
などの目的を持っていると考えられています。

多くの種では、求愛給餌を受ける際にメスは翼を細かく高速で振るわせると同時に口を大きく開けます。その姿は、まるでヒナが餌をねだっているようにも見えます。

また、求愛給餌の後に交尾が見られることもあります。

2019年3月26日に求愛給餌を確認

野鳥の中でも、カワセミの求愛給餌はもっとも観察しやすいのではないでしょうか。

私のフィールドでは、単に池の周りをウォーキングしている人でも目視でその微笑ましい姿を見ることができます。

カワセミの求愛給餌の一連の流れは?

給餌用の小魚を獲ると木に止まり、魚を枝に何度も叩きつけます。魚が動かなくなると、必ず頭が先になるように咥え直してメスのところに運んでいきます。(頭を先にするのは、鱗が喉に引っかからないようにする配慮でしょう)

オスがじらしたり、メスが素っ気なくしているようなときも見受けられますが、通常はオスが近づくとメスは翼を下げ気味にして高速で細かく振るわせて「頂戴、ちょうだい!」アピールをします。

そのような時の魚の受け渡しは一瞬で終わり、観察者が気がついた時はもうメスが咥えて飲み込もうとしているでしょう。

時に求愛給餌の後に続いて交尾が行われることがあるので観察する際は油断しないようにしましょう。

決定的瞬間は今季はこのショットだけでした
Kingfishers-Courtship Feeding-High Quality Version
上の魚を渡す決定的瞬間を含む連続写真をスライドショーにしてみました

なんと、給餌を中止したこともありました!

オスがメスの横にやって来てしばらくそのままいましたが、魚を咥えたままどこかへ飛んでいきました。

理由は不明です。
メスが受け取ろうとしなかった?
オスが焦らそうとした?

ということが考えられますが、連続写真を順番に見てみると、どうやら後者の理由のような気がします。

ちなみに、求愛給餌は抱卵が始まるまで続けられます。

カワセミの交尾-撮影日:4月7日

カワセミの交尾は求愛給餌の後に時に見られます。(交尾を観察したのは今季が初めてでそれも1回だけなので、求愛給餌と関係なく交尾を行うこともあるのかは分かりません)

その時間は8秒ほどです。したがって、その瞬間に出会えば撮影できる可能性は高いでしょう。

翡翠の交尾シーン

2019年3月31日-三角関係のバトル勃発!

野鳥の世界に「三角関係」なるものが存在するのかどうか分かりませんが、3羽のカワセミが何やら騒々しくしている現場に遭遇しました。

場所はいつもの「カワセミ観察ポイント」です。

カワセミが3羽いることに驚き状況が飲み込めないまま観察と撮影を開始しました。(池の周りだけをウォーキングしている人が30分ほど前からこの状況が続いていることを教えてくれました)

1月下旬のオス同士のバトルを思い出し、

冬に縄張り争いをやっていたオスがまたやって来て三角関係状態じゃないでしょうか。

とコメントすると、みなさん納得の表情でした。

ところがです、

帰宅して撮影した写真をモニタ上で等倍表示すると、そこに確認できたのは「オスが1羽に、メスが2羽」だったのです。

侵入者はメスだった!(≧◇≦)

これには本当に驚きました。既に成立しているカップルに横恋慕するのはオスに決まっていると思い込んでいましたから。

左がメス、右がオス(このメスが本妻かどうかは不明)
上の2羽がメス、左下がオス

ここにもう1羽のメスがやって来た途端、カオスです。

なんと、オスが逃げ出しました。

メス同士は”一触即発”状態です。

この後も繰り広げられたバトルを写真で紹介します。

たぶんですが、奥が本妻、手前が侵入者のように思います
お互いに素知らぬ顔をしていますが、実はしっかりと牽制し合っています
突然、奥にいたメスが襲いかかります。まるで、スクランブルです。
あわや空中戦
侵入者のメスをどこまでも追いかけます
メス同士のバトルをオスは高みの見物というか他人事のようで我関せずという感じでした

カワセミの世界では、このような場合、オスはどのような心境なのでしょうね。

後編に続きますが、後編は準備中です。今月中のアップを予定しています。m(._.)m

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